ロックンロールに蟀谷を

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「人にはいろいろな事情があるものだ」というくせに自分の事情のみを判断材料に加えておくれとな

よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」 - 活字中毒R。
よしもとばななさんの↑これについて。
読むのが面倒くさい人のために3行に要約すると、
・ばななさんたちが居酒屋にワインを1本持ち込んで飲もうとした
・友人の送別だという事情を話しても、店長は許可をくれなかった
よしもとばななを帰してしまうようでは、あの店はつぶれるだろう という話。
個人的にこのよしもと氏の文章に激しく不快感を覚えたんだけど、それは、読者を味方につけたいがために、主観的な状況説明をうだうだうだうだと書いている点だ。

 この間東京で居酒屋に行ったとき、もちろんビールやおつまみをたくさん注文したあとで、友だちがヨーロッパみやげのデザートワインを開けよう、と言い出した。その子は一時帰国していたが、もう当分の間外国に住むことが決定していて、その日は彼女の送別会もかねていたのだった。

 それであまりおおっぴらに飲んではいけないから、こそこそと開けて小さく乾杯をして、一本のワインを七人でちょっとずつ味見していたわけだ。
 ちなみにお客さんは私たちしかいなかったし、閉店まであと二時間という感じであった。

 私たちはいちおう事情を言った。この人は、こういうわけでもう日本にいなくなるのです。その本人がおみやげとして海外から持ってきた特別なお酒なんです。どうしてもだめでしょうか? いくらかお金もお支払いしますから……。
 店長には言わなかったが、もっと書くと実はそのワインはその子の亡くなったご主人の散骨旅行のおみやげでもあった。人にはいろいろな事情があるものだ。

強調は引用者による。

腹を立てたエピソード、揉め事のエピソードをしゃべるときに、こういう話し方をする人っているよね。「ちょっっっっとだけだよ?」とかいう人。聞き手が自分サイドの意見に共感してくれなかったらというのが怖くて仕方ないんだろう。
私たちにはこんな考慮されるべき事情があったのに。しかも私たちはこんなに控えめな態度だったのに。そんなことを書かれたって確かめようもないし、双方の言い分が聞ける状況ならまだしも、有名人が一方的に発信する文章でこれはいただけない。フェアじゃない。
極端な話、店長に言わせりゃ↓こうなのかもしれないのだからさ・・・。

 この間店に、ちょっと異様な年齢層やルックスや話し方の集団がやってきて、閉店間際までギャーギャーと大声で騒いでいた。土曜の夜だというのに、おかげで他の客は皆興が冷めた様子で早々と帰ってしまった。
 おまけに、持ち込みの酒まで飲もうとしはじめた。バイトの子が勝手にグラスを渡したのを見つけ、「ダメじゃないか」と咎めたら、「だって、吉本ばななですよ?」と言い出したから、思わず怒鳴ってしまった。ばかやろう、お客様はみな大切なお客様だろうが!ひいきなんてするんじゃねえ!と。
 そして店長である私自らその集団のところに言って、あくまで下手に出て、お客様、大変恐れ入りますが、持ち込みは禁止させていただいております、ということを伝えた。
 すると、ろれつもろくにまわってない状態で、「いいじゃないの!この子はもう日本にいなくなるのよ!お金がほしいの?はらうわよ!」と言われてぶち切れそうになったが、あくまでおだやかに、「きりがなくなりますので」と諭した。
 客には言わなかったが、人の良い私の父が営んでいた飲み屋は、一度持ち込みを許してしまったばかりに歯止めがきかなくなって、ついに多額の借金を残して潰れた。人にはいろいろな事情があるものだ。


※追記:居酒屋の売りは「居ること」だというくせに「居代」を支払わないとな - ロックンロールに蟀谷を