ロックンロールに蟀谷を

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宮部みゆき初読書『火車』で抱いた違和感

宮部みゆき火車』を読了。
なんだろう。すごく面白かったのは確かなんだけど、ちょっとした引っ掛かりが2点ほど。
まず1点は、子どもの描写に関する違和感。つまり「本間俊介」の息子「智」に対する違和感である。

「途中で一度、テレフォンカードの度数がなくなっちゃったんだと思うけど、切れちゃったんだ。そしたら、あわててかけなおしてきてさ、スゴイ早口でしゃべってさ」

上のような「智」の語り口には、ただ10歳の男の子にしてはしっかりしすぎているというだけでない、もっと根本的な部分での違和感を感じた。全然うまく説明できないが。
女性の心情とか、人が話すときのしぐさとかの描写があまりにリアルな分、よけいに子どもの描写のおかしさが浮き立つのかもしれない。
そしてもう1点が、さらに感覚的で伝えにくいのだが、なんとなく、この著者宮部さんとは、友だちとしてはあまり仲良くなれなさそうだなーなんてことを、読んでいて漠然と感じたのだ。
なんというか、著者があえて文中に記さぬ暗黙の了解的な部分の思考手続きに、全然共感できないのである。話の中で、主人公の「本間」が、Aという事実が明らかになった→だからBに違いない!って昂ぶった様子で語ってるときに、えーそういう風に考えちゃうんだーって、どこか醒めた感じで読んだ部分が多々あった。
このことがけっこう自分の中で気にせずに読めるレベルでなくて、小説の評価をするなら「すごく面白かった!」となるにもかかわらず、宮部さんの他の作品を積極的に読もうという気分になれないのが不思議なところである。



※追記
なんとなくamazonのレビューを見てて、うおっと思った。すんごい似た感覚を持った人が居た!!

なんでこの作品が絶賛されてるかよく分からなかったというよりは、この作家があまり好きじゃないんだと思った。宮部みゆき原作の映画を今まで二作品見たことはあったが、初めて本を読んだ。やっぱり合わなかった。ごく稀に表現・描写に不快感を覚える。痛々しい感じで読めない分けではない。でもそのことが続きを読む気を抑え、萎えさせる。だがこの本が絶賛されているということは社会一般には受け入れられる表現・描写なんだと思う。ただ読書は趣味だ、絶対的評価ではない社会的評価がどうであろうとも自分の評価は2だ。

すんごいよくわかる。わかるぞー。